私たちは、3人で登山をしていました。
目的地は山頂付近にあるコテージで、そこで1泊してから下山する予定で山に入りました。
しかし、道中で悪天候や道の間違いなどによって予定のコースを大きく外れ、日が沈む前には目的地に到着するはずが、日が沈みかけてもそれらしい建物が見えないどころか、ここがどこかもわからなくなってしまいました。
歩き疲れた上に、危険な動物の目撃例がなかったとは言え、夜の山が危険であることには変わりなく、私たちは歩きながらどうしようか相談していました。
その時です。
進行方向に建物らしき影を見ました。
目的地にしては全く明るくなかったので、途中の休憩所か何かだと思い、せめて現在地が分かればと思い、その建物に近づきました。
案の定、それは予想通りの木造の建物でしたが、看板などが無いことを考えると、休憩所でも無さそうでした。
私たちは中を捜索し、地図などが無いか確かめ、最悪の場合ここで1泊することにしました。
3人がかりで中を探しましたが、古びた机や椅子があるくらいで、地図どころか紙切れ1枚見つけることができませんでした。
仕方なく、私たちは念のための非常食で一晩食い繋ぎ、夜が明けるまでここで休むことにしました。
メンバーのひとりが壁にもたれかかった時、バキっという音とその人物の短い悲鳴が聞こえました。
どうやら、もたれかかった壁をぶち抜いてしまったようです。
何やってんだよ、ともう一人のメンバーと一緒に彼の元へと駆け寄りました。
懐中電灯で照らした彼の顔は、恐怖で引きつっているようでした。
そこまで怯えなくても、と思いながら彼に手を貸そうとしたとき、私は彼が恐怖していた理由を知りました。
彼がぶち抜いた壁の奥にはさらに壁があって、そこには難しい字が書かれた御札が何枚もびっしりと貼ってあったのです。
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あまりの光景に私も驚き、懐中電灯を落としてしまいました。
もう一人のメンバーも見てしまったようで、彼も驚いています。
するとその壁の方向から「ここから出してくれ」という男性と思われる声が聞こえてきました。
もちろん、誰の姿も無いのに、壁から声だけがするのです。
しかも、その声は続けて「俺の代わりにお前らを壁の中に」と言い出したので、私たちは怖くなってその建物から脱出し、ひたすら走り続けました。
運良く私たちは目的地に到着することができました。
コテージの管理人に、遅れたことを詫びた私たちは、例の建物について聞いてみると、「知らないほうが良い」とだけ言って、管理人は部屋に戻って行きました。
その声の低さと冷たさに、私たちは絶句し、忘れてしまうことに決めました。