この話は、昔は人気があり観光客が大勢訪れていたらしいのですが、めっきり人気が無くなり寂れてしまった観光地の古い旅館に泊まった時の話です。
私は友達と2人でキャンピング仕様の1BOXでの車中泊予定で当ての無いドライブ旅に出掛けました。
長い山道を上がり切ったところに湖があり、そこは想像と違い賑やかな観光地ではなく寂れ切った死の街といった感じがしました。
湖周辺の建築物の全てが古く薄汚く寂れて、人の気配がしません。
私と友達は、うすら寒いこの雰囲気が気に入り、今日はここで飲み明かそうという事になりました。
私達は暗くなる前にと、湖の周りを散策することにしました。周囲にある土産屋らしき建物は全て何年も使用されていないのが解る朽ち果て方をしていて、かなり不気味です。
私達は湖の周囲の散策を終え、車を湖畔の見晴らしのいい場所に移しビールを飲みだしました。
暫くして、あたりも暗くなりだした頃、私達はある失敗に気づきました。
そうです、まさかお店の一つもやってないとは思わなかったのと本来ここで泊まるはずではなかったので食料を買ってきていなかったのです。
もう仕方ないので今日は酔った勢いで寝て、明日朝早く出発し何か食べようという事にしましたが、ツマミは乾物しかなく、どうにもお腹が減ってきました。
そんな時、友達がいきなり、「あれ、あそこ明かりがついてるぞ!」といいました。
その場所は先程散策した時には、使用されているような建物があるようには見えなかったのですが、確かに一つの建物全体に照明が入り旅館か料亭のように見えました。
「何か食えるかもしれない、行ってみよう!」
私たち二人は明かりのついた建物の方へ歩いて行ってみました。
古いですが、立派な旅館のようです。
「おかしいな、こんな大きな建物さっきは無かったよな!」
「うっかり見落としたのかもしれないよ。」
私達は、とにかく何か食べさせてくれるか聞いてみる事にしました。
旅館に入っていくと、明かりは灯っていますが、人の気配がありません。
二人でどうしようか話し合っていると、奥から女将さんらしき人が出てきました。
私達は、事情を話し何か食べさせてもらえるか聞いてみると、女将さんはとても良い人で、
「この辺は夜になると危ないから、車なんかで寝ちゃだめよ。」
「丁度、今日は急なキャンセルがあったので部屋も食事も用意があるから今日は泊まっていきなさい。」
と言って無料で泊めてくれることになりました。
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女将さんに連れられて部屋に向かったのですが、部屋は廊下を四度ほど曲がった先にありました。
女将さんは「今料理を持ってくるので少し待っててね。」といい部屋を出ていきました。
「おい、馬鹿に長い廊下だったけど、この旅館どれだけデカいんだよ。」
「それに、ここに来るまで人の気配がなかったよな。」
私達は不審に思った点を話しながら冷蔵庫を開けてみると中にはお酒類とジュースが一杯に入っていました。
とりあえず、ビールを飲みながら雑談をしていると女将さんが料理を運んできてくれました。
美味しそうな肉料理で、二人では食べきれないほどの量がありました。
大量の肉料理を見て嬉しくなった私は、
「こんな豪勢な料理頂いちゃって申し訳ないです!これ何の肉なんですか?」と質問すると女将さんの声の表情が変わり
「これは、お前ら人間の肉だよッ!」
そう言った女将さんの顔は、何も無かった・・目も・・口も・・鼻も・・・
気が付くと朝になっていて、私達は朽ち果てた土産屋の前に座り込んでいました。
凍死してもおかしくない程、体は冷え切っていました。
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