女友達数人で旅行に行ったときのことです。
夜中にホテルでゲームや世間話などしていましたが、何もやることがなくなり怖い話をしないかと提案したことがありました。
しかし友人の1人があまり気乗りせず、理由を聞いたところ自分には霊感があって実際にみえてしまうから気が進まないのだということでした。
友達の中には4人ほど霊感などそういった能力のある人がいましたが、みえるというのは珍しくどんな体験をしてきたのか興味がわき、そんな私たちをみて彼女は静かに体験したことを話し始めました。
彼女の実家は東北地方にある小さな不動産会社で彼女は時々お茶くみやコピー作業を手伝っていました。
事務所には契約を交わすための応接場が曇りガラスで囲うように設けられており、お客さんが座るとすぐにお茶をだすようにしていたそうです。
その日は6月の梅雨の季節で外では小雨が降り、湿気が顔にはりつく様だったといっています。
学校から帰った彼女は、事務所にいる会社員数名と父親を確認して居間へつづく階段を駆け上がりました。
父親におかえりと声をかけられたので上から顔だけ出してただいまと返事をすると、応接場の曇りガラスに人影をみつけお客さんが来ていたことに気付いたのです。
彼女は、上の居間で着替えるとすぐにお茶を用意し応接場に向かいました。
誰も応接場のお客様に何の対応しなかったを彼女が気にならなかったのは、今思えば不思議なことだったと話しています。
応接場の曇りガラスを覗くと薄汚れた作業着のおじさんが座っていました。
なぜか暗くぼやけていて顔を確認できませんでしたが確かにおじさんが座っていたのです。
彼女はいつも接客するようにお茶をそのおじさんの目の前に置き、お辞儀をするとその場を離れました。
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応接場から出てくると会社員の方がこちらに向かってきたので彼女はお茶を出したことを伝えたのですが、会社員の方は不思議そうな顔で誰に?と答えたのです。
応接場にお客さんがいたから・・・と応接場に目を向けると信じられないことに曇りガラスの向こう側には人影がありません。
さらに近づいて覗いてみてもそこには置き去りにされたお茶が湯気をたててあるだけでした。
その話を話してくれた彼女は、最後にこう語ったのです。
「実際にみえているものが信じられなくなった。それからずっとぼやけている顔には近づかないようにしているの。」
ずっと・・・ということは彼女はいままでに何人みてきたのか、また今もみえているのか。
そう語った彼女の目線はホテルの窓に向けられていました。
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