ためらい傷
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インターネット上で知り合った日向さんは、猫を飼っていて同じ猫好きということからよくやり取りをしていました。
好きな音楽や共通する気持ちから直接会うことも多くなり始めていた頃、日向さんに変化が見られ始めたのです。
最初は、見た目が痩せたかな?という程度でしたが、会うたびに腕や足の傷が多くなっている気がしました。
「猫に引っかかれるんだけどリストカットと間違われそうで困る」と言っていたので、私はそれほど心配していなかったのです。
そんなある日、日向さんの家にお呼ばれされたことがありました。
日向さんの家は、一人暮らしの一軒家で猫が10匹近くいる家だと聞いていました。
猫とたくさん触れ合えると思い、胸を躍らせて行ったのですが、玄関で一匹の子猫を触ろうとすると「フー!」といって逃げてしまうのです。
家の中に入っていくと猫と度々目が合うのですが人間嫌いな猫が多く、絶対に近寄ってきてはくれませんでした。
それも飼い主である日向さんにも一切近寄る気配がないのです。
日向さんに猫が触りたいと言うと快く応対してくれたのですが、彼女が向かった奥の部屋からすごい猫の叫ぶような鳴き声が聞こえてきました。
そしてしばらく大きな物音がし続けた後、日向さんが猫の手足を持って宙吊りにしながら猫を運んできたのです。
しかも日向さんの首から大きくめくれた皮がひらひらとしていて、白いワンピースが血で赤く色づいていました。
それなのに日向さんは、どこか満足そうな笑みを浮かべているのです。
すぐに救急車をよび、その日は猫どころではなかったのですが、それを機に日向さんを警戒した私は会うことをやめました。
後日、日向さんの様子が気になり始め日向さんをよく知る友人に日向さんのことを聞きました。
日向さんが痩せ始めたころ、日向さんは恋人と別れたそうです。
なんでも恋人が酷く乱暴者でケンカの最中に恋人が子猫を投げて殺してしまったことから別れることになったといいます。
それから日向さんは、生き残った猫達に毎日謝るようになり、それが日常化したときには、猫にかまれたり引っかかれることを願うようになったのです。
わざと猫に嫌がることをして引っかかれるので傷も多くなり、日向さんの猫達も人間を警戒するようになったと友人は話してくれました。
日向さんは、最初は償いをしたかったのかもしれませんが、だんだんと時間が経ち猫に殺して欲しいと考えていたのかもしれません。
日向さんの願いが歪んでいった原因はわかりませんが、現在彼女は実家で暮らしていて、残った猫達は知人に引き取られていったそうです。
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