彼は道に迷っていました。
その日は、異動の為に県外に引越しをする日でした。
始めて趣いた地で、彼はさっそく道に迷っていたのです。
重たい荷物は一旦、駅に預けてきて、地図もその中に仕舞っていたのです。
駅にも戻れず、彼は夕暮れから日暮れになるような時間、一人で彷徨っていました。
いつの間にか、公園のような、空き地のような場所に出ていました。
彼はそこで一旦休憩することにしました。
歩き疲れていたのです。
持っていた、自動販売機で買ったペットボトルの飲料を飲みながら途方に暮れていた彼は、そこで一人の人影を発見します。
人見知りする彼でしたが、もはや背に腹は変えられません。
彼は意を決してその人影に声をかけました。
しかし、その人影はこちらに気づかないのか、歩き去ろうとしています。
彼はさらに近づいて声をかけます。
その人影はようやくこちらに気づいたのか、歩みを止めてこちらに振り向きました。
しかし、どうにも様子がおかしいのです。
薄暗かったとはいえ、その表情が全く見えなかったのです。
輪郭だけははっきりとしていましたが、まるで黒い影か何かのように輪郭以外は全くわからなかったのです。
体格からして男性であるとは判別できましたが。
彼は、そんなことはどうでも良いと考え、彼に道を尋ねました。
駅へ行くにはどちらに向かえば良いのか。
その人物は、何も言わずに自分の後ろの方を指さしました。
彼は何も言わなかったことは気にせず、感謝の言葉を述べました。
その人物は、再び歩き始めました。
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親切とはいかなくとも道を教えてくれた人物に感謝しながらも、やはりどこかおかしいと感じた彼は、ふと振り向いてその人物の行く先を見つめてみると、街灯に照らされたその人物の影に違和感を感じました。
はっきりと影は映っていました。
その人物の首から下だけは。
見間違いかとも思いましたが、次の瞬間にはその人物の姿が消えていたので確認することはできませんでした。
しかし、首から上の容姿を確認できていないことと併せて、先ほどの人物は何者であったのかが気になって仕方がありませんでした。
数日後、新しい職場で聞いた話では、それは亡霊ではないかという話です。
その地域では昔から子供たちの間で流行っている話だそうです。
亡霊の首から上が無いことを指摘すると、その人の首をねじ切って自分と同じ姿にしてしまうのだとか。
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