彼女には一人の友人がいました。
彼女自身は交友関係が広かったのですが、その友人は彼女しか友人がいませんでした。
その友人は裁縫が得意で、彼女もいくつか友人の作った小物を持っていました。
内気な友人でしたが、彼女とは普通に接することができました。
あるとき、彼女は親の転勤の都合で転校することになりました。
送別会では、その友人から手作りの「クマのぬいぐるみ」を贈られました。
ぬいぐるみは初めてのプレゼントでした。
丁寧に作られたことが分かる出来栄えでした。
彼女は、引越し先の自分の部屋にそれを飾ることを約束しました。
無事に引越しも終わり、部屋の家具類も無事に置き終わったあと、そのぬいぐるみを勉経机の上に置きました。
そして、
その日から彼女は誰かに見られ続けている感覚に襲われるようになりました。
部屋の中にいると、誰かの視線を感じるようになったのです。
それも、机で勉強している時に最も感じるようになりました。
彼女は、その視線の正体が例のぬいぐるみではないかと疑いましたが、せっかく貰ったものを無碍に捨てることはできず、引き出しの中に片付けることにしました。
次の日、学校から帰った彼女は驚愕します。
机の上に、仕舞っていたはずのぬいぐるみが置かれていたのです。
家族に聞いても誰も知らないと言います。
そうなると、勝手にぬいぐるみが引き出しから出てきたことになります。
彼女は友人に申し訳ないと思いつつ、そのぬいぐるみを捨てることを考えますが、転校先の学校でできた友人から聞いた話で「呪われた道具とかは、捨てても戻ってくる」という内容を聞いていたので、捨てるだけでは足りないと思った彼女はそれを学校に持って行きました。
焼却炉に捨てて燃やすためです。
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そして次の日、彼女はこっそりとぬいぐるみを焼却炉に入れました。
帰る時間になり、彼女は陰からこっそりと焼却炉を覗いていました。
ちょうど用務員さんが焼却炉に火をつけるところでした。
煙突から煙を上げているのを見た彼女は一安心しますが、一瞬、焼却炉から禍々しい雰囲気を感じました。
それから数年後、
高校に進学した彼女はかつての友人(ぬいぐるみをくれた友人とは別人)とクラスメイトになりました。
そこで彼女はぬいぐるみをくれた友人のことを聞くと、数年前に家が火事になって一家全員亡くなったそうです。
その日は、ちょうど焼却炉にぬいぐるみを入れた日と同じ日でした。