この話は、父親がある山深いキャンプ場でキャンプをしている時にたまたま一緒になった男の人から聞いた話だそうです。
そのキャンプ場は登山者に人気の山の麓にあり、登山者が利用するキャンプ場で、その日は3人の利用者がいました。
父ともう一人は、そのまま登山者という感じですが、一人の男(F)はちょっと変わった格好をしていました。
黒の皮のコートと皮のズボン、野球帽に暗くなってきているのにスポーツサングラスをかけ、ワークブーツを履き、皮の手袋をしています。
何となく、纏まっていない感じがするのですが、本人は全然気にしていないようでした。
ここで出会ったのも何かの縁だということで、3人でお酒を飲みながら話でもしようという事になりました。
小一時間もたち、お互いに打ち解け合ってきた頃、変わった服装の男Fが言い出しました。
「ところで、猫という生き物のことをどう思いますか?」
変わった言い方をするなと思いながらも、「猫は可愛いですね。」と私達は答えました。
F:「貴方たちは解っていない!猫は動物よりも悪魔に近い生き物なんです。」
F:「猫は可愛い外見と違い、獰猛で執念深い悪魔の様な生き物です。」
F:「私の村の忌まわしい風習と猫の恐怖から逃げ回る私の話を聞いてくれますか?」
以下、その時にFが語った内容です。
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Fの生まれ育った村は山麓にある孤立した村で、外部との交流もほとんどない過疎の村だったそうです。
その村では、昔から猫は魔物と信じられていて、見つけると火の中に放り込んで殺してしまっていたそうです。
その風習のせいで村には猫という生き物は存在しませんでした。
そんなある日、村の外れに子猫を3匹連れた猫が迷い込んできたのです。
猫は疲れ切っているようで人間が近づいても逃げなかったそうです。
村人たちは、村の風習に従い、親猫と子猫を捕まえ、火の中に放り込んで焼き殺してしまいました。
それからです!村の人間がかみ殺される事件が多発しました。
どの死体も、両目をえぐり取られ体中傷だらけで発見されていることから、野犬の群れにでも襲われたのだろうという事になりました。
村では若い者がパトロールをして廻りますが一向に発見できず犠牲者だけが増えていきます。
その頃になると、必ず目を潰すのは猫なんじゃないか!という話になりました。
猫は頭が良いので、まず目を潰しその後で嬲り殺すようにして殺害するというのです。
単独のハンターである猫は、物陰からじっと獲物を狙うので正体が発見できないのだろうと。
村の最後の老人が殺害された後、残った少数の若者である8人は村を出ることになりました。
Fは仲の良かった友人と2人でこのキャンプ場に近い町にきたそうです。
その後、5年間何事も無く暮らしていたFですが、3か月前、一緒に町に来た友人が獣に噛み殺されたと聞き、直後に猫に襲われたため、山奥に逃げ込んだのが今日ここにいる理由だというのです。
「私は猫が魔物だという事を伝えるためにここにいるんです。」
そういって、Fはサングラスを外しました。
Fの目は両方とも空洞でした・・・
「ウァー―――――!!」
二人が気が付くと、Fの姿は何処にもなかったそうです。
猫が魔物というよりも、その村の風習が恐ろしいと思いました。
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