大学院の教授
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これは、当時、私がアシスタントをしていた大学教授、H教授が体験した出来事である。
当時、私はD大学のH教授の元で働いていた。
マンモス大学であったが、当時は大学院に進む生徒も少なく、教授一人に付き大学院生1人いればいいといった様なものだった。
ある冬の寒い日、研究室のある古い校舎の中で、私とH教授は、教授が次に発行する本の執筆に追われていた。
資料が足りないと感じたH教授が、私に資料室に言って本を取ってきて欲しいといってきた。
私は直ぐに資料室に向かったが、貴重資料とのことで地下2階に保管されていたその資料を取るには警備員と一緒に向かわなければならず、手続きも面倒で、資料をとって研究室に帰るのに2時間かかった。
私が資料を取って研究室に戻ると、教授が腰をぬかして座り込んでいた。
私はまた、この間のようにギックリ腰にでもなったのだろうと思い、笑いながら「先生、大丈夫ですか?」と声をかけるが、どうも様子がおかしい。
私が部屋に入ってきたのにもかかわらず、何故か私を見ずに、私が開けたドアばかりみている。
「どうしたんですか?たてますか?」
と私が側まで行くとようやく我に返ったように教授が私をみた。
「あ……..君か、よかった。」と言われ、何がなんだか分からない私であったが、後からこんな話をH教授から聞いた。
私が資料室に出かけた後、H教授は私と自分が食べるためのご飯を買うためにコンビニに出かけたらしい。
お弁当を買って研究室の前まで戻ると中から物音がする。
私が帰った来たのだと思い部屋を開けたが誰もいない。
おかしいなと思いながら部屋に入ってお茶を入れようとすると、コンコンとノックが聞こえた。
H教授が「はーい。」と返事をするも、誰も入ってこない。
H教授がドアを開けて外を確認しても誰もいない。
そして、しばらくたった後、H教授が椅子に座ってお茶を飲んでいると、またコンコンとノックが聞こえる。
そして、同じように返事をするも、誰も入ってこない。
そのようなことが、何回も続き、さすがのH教授も苛立って、今度ノックがしたら直ぐにドアを開けられるようにとドアの前にしゃがんで待っていた。
そして、またコンコンとドアがなった。
「いまだ。」そう思ったH教授はドアノブに手をかけた。
しかし、その瞬間ドアをすり抜けてこちらを覗く顔と真正面から対峙したとのことであった。
驚いた教授は腰をぬかして、私が帰るまでその場に座り込んでいたという。
研究室がある校舎は古く、国の文化財にも指定されている。
長い歴史の中には、私たちが知らない何かがあったのかもしれない。
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