山に取り残そうとする霊
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彼はアスリートとして毎日の特訓を欠かしていません。
ただ、山など遠出での合宿などを極端に嫌がります。
なぜ、そこまで嫌がるのかを聞いてみると、こんな話をしてくれました。
数十人のメンバーで山にバスで向かい、山を横断してくるという特訓をすることになりました。
その山は、すこし町から離れた場所にあり、もしバスに置いていかれれば簡単には帰れない場所でした。
そのため、途中で特訓を嫌がって逃げ帰ろうとしても簡単には町までたどり着けないので、全員にきちんと最後まで特訓を完了させるのにもってこいでした。
バスは、メンバーを降ろしたあとで山の反対側まで先回りし、特訓を終えたメンバーを乗せて帰るという方法を採用しています。
山中はほぼ1本道でしたから、迷う心配などありませんでした。
ある程度は他のルートもありましたし、道幅もそれなりだったのと、そこそこの距離があったので他のメンバーから離れて走ることもありました。
彼はメンバーの中で中間ほどの順位をキープしていましたが、前後には他のメンバーが見えませんでした。
先頭集団とも遅れているメンバーとも離れてしまったようです。
そんな中、彼は足を踏み外してしまい、脇の崖を滑り落ちてしまいました。
気が付いたとき、時計を確認すると10分ほど経っていました。
既に最下位となってしまったと判断し、怪我がないことを確認した彼は山道を急ぎます。
仮に他のメンバーが全員到着していて自分だけが遅れているとしても、点呼で自分がいないことは分かりますし、捜索しに来てくれる手はずになっているので置いていかれる心配はありませんでした。
しかしながら、それはカッコ悪いと思い、彼は急いでゴール地点で待つバスを追いかけます。
しかし、ゴール地点で彼が見たものは、今にもそこから走り去ろうとしているバスの姿でした。
彼が手を大きく振ってバスに自分のことを知らせ、なんとか間一髪のところでバスを停車させることに成功します。
彼はメンバーに対して点呼の不備を責めますが、誰も彼の不在に気付かなかったそうです。
彼は、メンバー全員から顔を覚えられているのでそんなことは無いだろうと訴えますが、どうやらメンバーも不思議がっています。
まあ、間違えたのだろうと考え、とにかく彼もバスに乗り込み、無事に帰ることができました。
その後、彼はその山に詳しい人と話す機会があって、こんな話を聞いたそうです。
あの山では昔、遠足のために小学校の生徒たちがバスでやってきましたが、点呼の不備で一人だけ置いて行かれたそうです。
当時は今以上に道路も整備されておらず、子供の足で町までたどり着くことはまず不可能でした。
結局、彼は山の中で力尽き、数日後に遺体で発見されたそうです。
そして、寂しがりだった生徒の亡霊が今でも仲間を増やそうとして山に入った人をおいてけぼりにさせようとしているのだとか。
実際、彼以外にも山で置いてけぼりにされた人が何人かいて、死者こそ出ていないものの、危険な状態にまで陥った人が多いそうです。
それ以来、彼は山での特訓を拒むようになったそうです。
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