霊が見えない友人

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私は幽霊や、よく分からないものが見える人間です。

この話は誰にもしませんし、言うつもりもありません。

科学的に証明ができるとも思えないし、頭がおかしいと思われるのが嫌だからです。

子供の頃、母親にさんざん嘘つき呼ばわりされて以来、私はもう二度と誰にも「見えたもの」を言わなくなりました。

私が見えるものは様々です。

人間の姿をしていたり、グロテスクな死体のままで現れたり、お化け屋敷の仕掛けのように突然やってきたり、かと思えばモニュメントのように動かなかったり、そもそも何の姿でもなかったりと、三者三様といった状態です。

ただ、見えない人でも気配は感じる事はあるらしく、ここにいたくないと感じたり、体の不調を訴えたりと、大多数の人がそういったものに近寄らないように生きています。

ところが、私の友人に一人、まったくそういった感受性がない人がいます。

彼は、どういうわけかいつも背中に何かしらを背負っているのですが、健康そうでした。

何かをつれている人は、大概体調が悪そうだったり、どんよりとした顔をしていたりするものですが、

彼はいつもニコニコとしていて、顔色もよく健康そのものです。

私はなるべく彼に関わりあいにならないように生きていたのですが、彼はどういうわけか私のそばによってきてよく話しました。

彼がつれているものがこっちに来ないように、気づかないフリをするのはとても骨が折れる事なので、避け続けていたのですが、これも何かの縁か、と私は諦めました。

アウトドアが大好きで、誰とでも仲良くなれると豪語する彼は、人格者であり、優しい人です。

そんな彼の背中には、入れ替わり立ち代りなにかがへばりついていました。

一度、同じゼミにいた女の子がべったりとはりついているのを見た時は、まさかあの子死んだのかとぎょっとしたものですが、そんなことはなくホッとしたのを今でも覚えています。

しばらく彼と一緒にいて分かったのが、彼は、よく分からないものを引き寄せてしまうたちなのだということでした。

電信柱の下でじっとしているなにかから、床にはいつくばっている黒いもやまで、彼が近づくとそのすべてがぎゅっとしがみつきます。

そのせいなのか、好青年であるはずの彼はどの友人とも長続きしませんでした。

女性関係も運がなく、精神的に問題がある女性に振り回されたり、一方的にフラれてしまったりと、ろくな目にあっていません。

それでも、いつもニコニコしている彼を私は尊敬していました。

そして、徐々に同情心も芽生えていました。

ここまで仲良くなった人は、私の人生の中で初めてであり、このまま彼が不遇な人生を送るのをただ見ているだけという現状に嫌気がさしてきたのです。

どうすれば彼を楽にできるだろうか、と考えた末、私は旅行を提案しました。

神社仏閣をめぐる旅にしよう、と言うと、いつでも笑顔だった彼の表情がはじめて曇りました。

そういった場所は苦手だと告げる彼に、私はきっと背負っているなにかがそう思わせているのだと確信しました。

結局渋々といった感じで彼は了承し、私は彼をとりあえず最寄りの神社へと引っ張っていくことにしたのです。

鳥居をくぐった瞬間、彼の体からバチバチという激しい音が聞こえ、彼がぶるぶると体を震わせました。

取り憑いたなにかが、必死に抵抗をしていると思い、私は必死で彼を神社の敷地内へと引っ張り入れました。

びゅう、と強い風が吹き抜けたような衝撃を全身に受けた時、あーあ、という彼の声がたしかに聞こえました。

え、と思って目を開けると、そこには驚いた表情の友人の姿があります。

背中には何ものっておらず、やっとなにかから解放できたのだと、達成感を覚えていました。

ですが、それは束の間のことでした。

鳥居をくぐった彼は、落ち着きがなくきょろきょろとあちらこちらを見ています。

指で何度も服の裾をにぎってははなし、髪の毛をいじってみたりと、明らかに別人といった態度の変わりようです。

お参りもそこそこに、その日はお互い帰路につきました。

それ以降、私が「彼」に会うことはありませんでした。

あの日から、彼から自信は消え失せ、顔色の悪い不健康そうな男になってしまったのです。

友人達はあっという間に周囲から消え去り、次第に不安定になっていった彼は学校に来なくなり、ついに退学となりました。

連絡もつかなくなり、それ以降私は彼と会っていません。

あの快活な青年が、私がよくみる「なにか」だったのか、それとも補助をしていた「なにか」をとってしまったせいなのか、未だにわかりません。

もしかしたら、私にだけ、彼が快活に見えていたのかもとも思います。

それでも、あの出来事以来、私はどんなにつらそうな人を見かけても、何かをしてあげようとは思わなくなりました。

私が一人の人生を狂わせてしまったことに、間違いはないのですから。

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