彼の所属しているサークルでは、時折パーティーを開いていました。
理由は何でも良かったのです。
例えば、テストで良い成績を残せたとか、振られた記念、良いことがあったり悪いことがあった時に、それを理由にメンバーで飲み食いをするのです。
そこまで大それたものではなかったので、大学側も特に注意するようなこともなく、持ち込んだお菓子や飲み物で少し騒ぐ程度でしたが、彼らはそれを楽しみにしていました。
ある日、飲み物が足りなくなった時に負けた人が自動販売機まで買いに行くというゲームをしました。
負けたのは彼です。
彼は、メンバーからの注文を受けてそれをメモ書きし、自動販売機まで買いに行きました。
買ってから戻った彼は、それをメンバーに渡していきます。
すると、自分の分を確保してもなお、1本余ったのです。
確かにメモに書いてあるとおりに買ってきたはずなのですが、コーヒーが1本余ったのです。
そのときは、間違って買ってきたのだろうということになり、あとで誰でも好きに飲めば良い、ということになりました。
その後、パーティーも終わって後片付けをするとき、全員が持っていた飲み物を飲み干してくずかごに捨てていると、先ほどのコーヒーがなくなっていることに気がつきました。
誰も飲んでいないと言います。
確かに、全員が自分の分を飲み干せていなかったので、コーヒーに手を付ける理由がありませんでした。
そもそも、買ってきていたのは無糖のブラックコーヒーで、甘いもの好きなメンバーは好き好んで飲みはしません。
ところが、そのコーヒーはついに発見されます。
ただし、中身は飲み干されていましたが。
結局、たかがコーヒー1本ということで、誰かが飲んだのだろうということで決着しました。
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しかし、その後も誰かが飲み物を人数分買ってくると、なぜか一人分余ってしまうのです。
メンバーはそれなりの人数がいて、しかも毎回出席する人数が異なるのでとっさのことでは誰も人数より注文が多いことに気がつかないのです。
それが続いたある日、メンバーの一人がこう言いました。
10年前くらいに、この部屋で死んだ人がいる。
その人物はよく無糖のコーヒーを飲んでいた。
それが今でもこの部屋にいるのではないか、というのです。
まさかと思いつつ、メンバーの知り合いに神社の関係者がいたので簡単ですがお祓いを依頼しました。
気休め程度でしたが、それ以来、飲み物が余ることはなくなったそうです。
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