転ばし様に守られる町
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祖父母の家のある地方では「転ばし様」という神様がいるという言い伝えがあります。
ある年、母の妊娠を機に祖父母の家に泊まることになった私は、しばらくの間はこの町で遊ぶことにしました。
その町は、四方を坂に囲まれた小高い丘の上にあり、町に出入りするためには四方何れかの坂を上り下りしなくてないけません。
それ以外は美しい田園風景が広がるくらいで、のどかな田舎町だったと記憶しています。
町中で遊んでいたとき、テレビの撮影が行われているのを発見しました。
ドラマとかではなく、旅番組かなにかだったと思います。
町には宿がひとつだけあり、それは祖父母の家の隣でした。
私が寝泊りしていた部屋からもその宿は見えます。
そこに泊まっているんだろうと思いました。
祖父母からは「夜には絶対に出歩くな、家から一歩も出るなよ」と言われていました。
臆病者な私はそんなことを言われるまでもなく、夜はずっと部屋にいることにしています。
すると、窓の外が騒がしいのに気付きました。
どうやら、昼間に見たテレビ局の撮影スタッフが、宿の従業員ともめているようでした。
窓が空いていたので話が聞こえ、「夜は出歩いちゃ危険だ」「誰かに盗られると困る!」といって、スタッフの一人が従業員の静止を振り切ってどこかに行ってしまいました。
どうやら、街の入口で撮影していた時に何かを忘れてきてしまったようです。
次の日、またしても宿が騒がしいので早く起きてしまいました。
寝ぼけながら聞いていると、どうやら昨日出かけたスタッフが死んでしまった、というような内容でした。
祖父母に「今日は家から出るな」と言われました。
頼まれても絶対出るもんか、と思いながら、そういえばなぜ夜に出歩いてはいけないのかと聞くと、「この町は『転ばし様』が守っている。
夜は悪霊が町に入り込もうとしているのを、転ばし様が坂で転ばせて食い止めている。
夜に坂に近づくと、悪霊と一緒に坂を転げ落とされて死んでしまう」という話です。
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