私にはある友人がいました。彼は内気なれど、優しい男の子でした。

その友人を含めた数人といつも遊んでいました。

放課後や休日を、彼らと過ごすことが何よりも楽しみだったのです。

しかし、ある日その友人は何も言わずに私たちの前から姿を消しました。

学校では、彼は転校したということになっていますが、どうにも腑に落ちないことばかりでした。

そんなある日、雨の中私は一人で下校していました。

雨はひどく、時には目の前すら霞んで見えるほどでした。

何とかその雨の中を家まで帰っている途中、目の前から一人の人影と、手に持っていた明かりが見えました。

何の光だろうと目を凝らしてみると、それは提灯でした。

この雨の中、その提灯の火は消えることなく、しかも、怪しく光っていました。

その人影は徐々に私の方に近づいてきます。

そして、ようやくその人影の正体が、いなくなった友人であることに気がつきました。

私は友人に近づき、今までどうしていたのかを聞こうとしましたが、彼は私のことに気がついていないのか、私を無視したまま歩いて行きました。

私は一瞬、あっけにとられていましたが、何とか持ち直して彼のことを追いかけました。

並行しながら話しかけますが、彼は一向に私の方を向こうともしませんでした。

いい加減イライラしてきた私は彼の前に立ちふさがりました。

しかし、彼は歩みを止めることなく、私にぶつかりながらそのまま歩いて行きました。

私はぶつかった拍子に転んでしまい、彼の後ろ姿を見ていることしかできませんでした。

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それから数年後、私はとうとう友人のことについて知ることになります。

友人は、一家で心中していたのです。

実家の経営がうまくいっていなかったようで、一家で自殺を図ったそうです。

しかし、妙な点がありました。

友人一家が自殺したのは、友人がいなくなった日のあたりだったそうです。

しかし、私が雨の中、友人の姿を見かけたのはそれから数ヶ月後のことだったのです。

いくらなんでもそこまで誤差があるはずもなかったのですが、それから事情を知る誰に聞いても友人一家が自殺した日に違いがなかったのです。

雨の日に見た人影は、間違いなく友人の姿でした。

手に持っていた提灯以外、服装や髪型も、いなくなった当時の姿のままだったのですから。

未だにわからないままです。

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