死亡した患者
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これはチェンマイのN病院でおこった出来事である。
その日、F医師は8時間にも及ぶ、脳内手術を終え、助手を務めたS医師と共に廊下を歩いていた。
あいにく、手術中に患者は死亡。
もともと成功率が10%にも満たない難易度の高い手術だった。
本来なら、手術をせずに、延命治療のみとなるこの患者を手術したのは患者たっての希望であったからだ。
家族への説明も終わり、F医師は引き続き夜勤があるS医師と別れ、6階にあるドクタールームに私物を取りに戻ったあと、家路に付くことにした。
時刻は深夜2時をまわった頃、F医師は「家に帰ってもあまり眠る時間はなさそうだな。」そう思いながらエレベーターに乗って、1階のボタンを押した。
しかし、エレベーターが動かない。
「故障か?こんなときに……..。」
F医師は苛立ちながら何度もボタンを押した。
そして、3分ぐらいたった頃、ようやくエレベーターが動き始めた。
F医師はホッとして、エレベーターが1階に着くのを待った。
しかし、エレベーターが次に開いた階は5階。
しかも、誰も乗る気配がない。
そして次に着いたのは4階、そして、また3階で扉が開いた。
患者の子供がいたずらをしているのかとも思ったが時刻は夜中の2時だ。
「まったく、疲れているときに限って……。」
F医師がそう思っていると次に扉が開いた瞬間、目の前に人が立っていた。
その人は、青い寝巻きを身に纏い、青白い顔をしてF医師を睨んでいた。
そして、その男は先ほど、F医師が執刀を担当し、死亡させたばかり患者であった。
F医師は驚いて、その男の脇をすり抜け、急いで階段を駆け下りて病院を後にした。
F医師がその患者の亡霊を見たのは、それっきりだったが、後に話を聞くと、なんと、その日、S医師も病院内を巡回中その患者の亡霊に会い、その後、2,3日高熱が続いたそうだ。
医師たちが止めた手術を本人の希望で行い、結果、死亡した患者の亡霊はいったい、何を彼らに訴えたかったのか。
今となっては知る由もない。
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