神奈川の病院に勤めている友達のエリは、看護士です。
5階建ての総合病院に勤めていてエリはおとなしく優しい性格だからか特にお年寄りの患者さんに気に入られることが多いそうです。
エリは、ある夏の日にハナさんという80歳のおばあさんの患者さんを担当することになりました。
ハナさんは、自転車に乗っていたとき坂で転んで頭を打ったらしく、検査では異常はなかったけど念のため2、3日の入院をすることになったそうです。
ハナさんはエリに自分は今まで入院をした経験がなく、今まで病気をしたことがない健康体なんだと自慢していました。
そのまま退院の日の朝を向かえ、ハナさんの部屋に行ったときのことです。
ハナさんは昨日よりも元気がなく、エリにはその顔が落ち込んで見えました。
どうしたのか尋ねるとハナさんは、私は死んでしまうかもしれないと言うのです。
なぜそう思うのかと聞くとハナさんは、変なことを言い出しました。
「犬が窓の外を落ちていくのが見えるんだよ。」
もちろん病院内はペットの連れ込みが禁止されているので犬などいるわけがなく、エリはその発言に不安を覚えました。
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いつ見えたのかと聞くと今もエリの後ろの窓の外で落ちているというので心配になった彼女は上司に相談しました。
ですが相談を受けた上司は、何事もなかったかのようにハナさんを予定通り退院させました。
後になってエリは聞いたそうですが、はじめての入院の時、患者さんは不安になって時折幻覚を見てしまうそうです。
ハナさんは、後日お礼のお菓子を届けに元気な顔で病院に来たので、エリは安心しました。
しかしエリは、あのときのハナさんの真面目な顔を忘れません。
人間の脳が見せる幻覚は恐ろしいほどぞっとすると思ったそうです。
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