ついてくる影

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昔から、私の妹は少し変わっていて、いつも妙な事を言っては周囲を困らせていました。

見えないものを見えたと言い張ったり、ないことをあったと言ったりと、その言動は妙で、そのせいでよく喧嘩もしています。

そんな妹が、思いつめた表情でリビングにいるので、きっとまた何か変な事を言うのだろう、と話を聞いてやることにしました。

「影がついてくる」

妹の口から出た言葉は、あまりにも当たり前のことでした。

中学生にもなって、影がついてくるなんて子供っぽいことで悩んでいるのかと笑いそうになりましたが、ここで馬鹿にするとまた喧嘩になってしまいます。

私は、影はそういうものだから、とぼんやりと妹を諭しました。

経験上、ここで丁寧に光と影の関係なんかを諭すと、そういうことじゃないと食ってかかられることは分かっていたので、曖昧に諭したのです。

妹は、ふーん、とこっちを見ているのかいないのか、わからないような上の空の返事を返してきましたが、そのままテレビを見始めたため、納得したのでしょう。

私はそれ以降、その話はすっかり忘れていました。

その話をしてから一ヶ月程過ぎた頃、妹がにこやかに話しかけてきました。

「お姉ちゃん、ありがとう、アドバイスどおりにしてたら影どっかに行ったよ!」

よくはわかりませんが、笑顔の妹を見て、いい事をしてあげたとホクホクしていたのですが、その日以降、私は後ろから視線を感じるようになったのです。

その気配は明るい時によく起こり、その度に振り返るのですが、あるのは自分の影だけという不気味な状態が長く続きました。

家に帰ろうが自室に引きこもろうがその状態は続き、私は次第に暗闇でじっとしているのが日課となっていました。

妹は、そんな私の様子をみて、影はそういうものだから、と諭してきます。

相当にむかつきましたが、私は聞き流しました。

いつもなら怒鳴っていたのかもしれませんが、そんな気力すらわかなかったのです。

「大丈夫だよ、そのうちどこかに行くって」そう言った妹の顔は晴れやかです。

そこでやっと私は、妹が言っていた影が私についていきているという事が理解出来ました。

妹の言うことが正しいのだとすれば、このまま我慢して生活を続けていれば、おそらく影はどこかへ行ってくれるのでしょう。

私は今も耐え忍んで生活を続けています。

昔よりも視線が増え、全身がだるく、常に何かしらの病気にかかっている今ですが、我慢していればきっと誰かに影がうつってくれるはず。

こんなにひどい目にあっている私をよそに、妹はといえば元気にあちこち飛び回っています。

勤務先で昇進するらしく、いつまでたってもミスがたえずに万年平社員の私とは違い、妹はすっかり高給取りになっていました。

最近は、哀れみの目をむけてくることがありますが、それもきっともうすぐ終わります。

きっと誰かに影をなすりつけられるはずです。

早くどこかに行ってくれないか、今日もそう願いながら自室に戻ろうとすると、妹から髪の毛を引っ張られました。

これは、影が見えると言い出した頃から妹がやる癖のようなもので、毎日一本、寝る前に私の髪の毛を引き抜かないと落ち着かないというのです。

たかだか髪の毛程度で私はガタガタいうような小さい女ではありません。

今日も私は、影がどこかへ行ってくれることを願いながら眠りにつきました。

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