願いが叶う人形

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私には、幼い頃から仲良くしていた友人がいました。

彼女は誰にでも優しく、無欲な子でした。

例えば、友人が好きなお菓子を今まさに食べようとしていた時に、すぐ横に同級生の子がやってきて、物欲しそうにしてきたらそのお菓子をあげてしまったりします。

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私は彼女から度々様々なおもちゃやお菓子、服やアクセサリーなんかをもらいました。

そんな彼女が、唯一手放そうとしなかったのが、薄汚れた犬の人形です。

元は白い色をしていたらしいですが、少なくとも私と友人が中学生になる頃には茶色と黒のまだら模様になっていました。

彼女いわく、その人形にほしいものをお願いすると次の日の朝にはそれが枕元においてあるといいます。

私は話半分にその話を聞いていました。

友人は少し夢見がちなところがあり、その時もそういう空想の話なのかな、と思っていたのです。

それは嘘でしょ、と言えば彼女の機嫌をそこねるような気がして、その場は話をあわせていました。

しばらくすると、友人にねだれば、大体それがもらえるという事を知った同級生たちが彼女にわらわらよってきてはあらゆるものをとっていきました。

私はそのことを度々怒ったりたしなめたりしていましたが、それを友人はいいからと言うのです。

ある日、彼女がお気に入りだったシャーペンをいつものように欲しがる同級生がやってきました。

彼女は、にっこり笑ってシャーペンをあげてしまいましたが、次の日には同じシャーペンを筆箱から取り出しています。

また買ったの?と聞くと、そうではなく人形にお願いしたの、と言われました。

その話を、どうやら私以外にも聞いていたらしく、すぐに興味津々、と言った感じで同級生たちが割り込んできます。

友人は、当たり前の事のように人形にお願いするとなんでも手に入る、と言いました。

同級生の誰もがそのことを信じていないようでしたが、おもしろがって友人をおだてます。

私は、それをぼんやり眺めていました。

どうせ、私が何かを言っても、友人は気にしなくて大丈夫とかいって、逆に私をいさめるのだろうと思ったのです。

この時、どうして友人に無理難題を押し付けるなと言えなかったのか、と私は今でも後悔しています。

一人の女の子が、友人に自分のまぶたを二重にしてほしい、といいだしました。

それを皮切りに、次々と私の鼻を高くしてだとか、色が白くなりたいと女子達が騒ぎ出しました。

私は、なんとなくいたたまれなくなってしまいその日は一人で家に帰りました。

次の日の朝、私は重い足取りで学校へと向かっていました。

友人の家は裕福です。

もしかすると、人形にお願いしていた言葉を彼女の両親が聞いていて、それを彼女に買い与えていたのでは、と私は考えていました。

今日、きっと彼女は学校で笑いものにされます。

憂鬱な気持ちを抱えてクラスに行くと、妙に人がいませんでした。

友人の姿ももちろんありませんでしたが、私以外の女子の姿がほとんどありません。

担任の先生が来ても、クラスの半数以上の生徒は現れず、最初は先生も首をかしげていたのですが、帰りのHRで深刻そうに話し始めました。

「実はな、欠席している女子のほとんどが、怪我をしたみたいなんだ」

みんな最初は訳がわからず、ただ先生の話を聞いていたのですが、怪我の内容を聞いているうちに、顔色が変わっていきました。

瞼がわれて元に戻らない生徒、唇が削り取られた生徒、体中に真っ白なペンキをかけられた生徒、目に染料を入れられた生徒。

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思い出してみれば、休んでいるどの生徒も友人に可愛くして、とお願いしていた子達です。

怪我の内容はそのお願いに確かに類似しているように思えました。

クラス中が静まり返ったのを見て、先生は不思議そうでしたが、誰もその原因を話そうとする者はいませんでした。

そのままHRは終わり、重苦しい雰囲気のまま私は帰路につきました。

家に帰る途中、なぜ友人が登校してこないのかと疑問に思い出しました。

まさか、友人も可愛くなりたいとお願いをしてしまったのでしょうか。

不安になって友人に電話をしたのですが、まったく連絡がつきません。

それから、友人は不登校となり、怪我の重い女子達は転校したり休学になったりと、中学を卒業するまで、私のクラスは暗い雰囲気のまま、3年間を終えました。

友人は卒業式にも学校には現れず、音信不通のままです。

なんとかして彼女に会えないものかと、家に直接行ってみたりもしましたが、疲れた表情の母親がでてくるだけでした。

そのまま高校、大学と進学し、すっかり友人の事を忘れていた私は、ふと彼女の事を思い出し母親にそういえば、仲良くしていた子がいたよね、と話してみました。

すると、母親の表情がみるみる曇り、そしてあの子ね、と言いづらそうに語りだしたのです。

友人は、あの事件の日、心の病気にかかったそうでした。

うわ言のように、人形のせいだとしきりにつぶやき、とられた、とられた、と叫び続けたそうです。

各地の精神科を転々としたそうですが治る見込みがなく、入退院を何度も繰り返し、私が大学に入る年に自殺したそうでした。

お葬式もなかったそうでしたが、彼女の両親が私に渡してほしい、と薄汚れた人形を手渡してきたそうです。

母親は、それがあまりにも汚かったために勝手に捨ててしまったと謝ってきましたが、私はそれでいいから、と言ってしまいました。

その薄汚れた人形は、聞くまでもなくあの人形だったのでしょう。

友人がなにをとられたのか、とられたせいでおかしくなってしまったのか。

それがわかっていても、なんでも叶う人形が手元にあったら、私は何も願わずにいられるでしょうか。

皆さんは、人形があったとして、何も願わずにいられますか?

何か大事なものを失っていったとしても。

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