家庭教師で訪問した魔界の家
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これは私が大学生の時の話です。
当時私は一人暮らしをしながら大学に通っていたので何かとお金がかかりました。
それでバイトをファミレスやコンビニでやっていましたが、家庭教師が稼ぎがいい事を知り家庭教師のバイトを始める事にしました。
そして訪問先の家へ行ってみると、そこには古くて小さな家がポツンと佇んでいました。
時間帯も時間帯だったのでかなり怖い雰囲気でした。
正直入るのを躊躇いましたが、「仕事だから・・・」と自分に言い聞かせ、恐る恐るチャイムを鳴らしました。
すると白髪のおばさんが出てきて、その顔を見て言葉を失いました。
フケだらけの頭。
目元にあるドス黒い隈。
ニタァ・・・と気色の悪い笑み。
一瞬で帰りたくなりましたが、やはり金銭的な事情もあり後には引けませんでした。
「どうぞ上がって下さい。」
「お邪魔します・・・。」
奥の部屋に通され、部屋に入ると「まさに子供部屋」と言うような感じの部屋で、何か不気味な感じがしました。
タンス、テレビ、ベッド、ぬいぐるみ、ロボットのおもちゃ、勉強机・・・
奥の勉強机に子供らしい人影があったのでそれに向かって近づいていく。
よく見ると・・・・・人形だった。
普通の子供の大きさで洋服も着せてあった。
恐ろしいのはその顔だった。
無機質な布に●が三つあるだけの顔。
血の気が引いた。
「えっ?人形・・・ですよね?」
何も考えず言ってしまった。
「はぁ!?!?何言ってるの!!??私の息子よ!!!ケン君!!!」
突然、豹変して大声で叫ぶ。
その瞬間身の危険を感じ、何とか穏便に済ませて早めに帰るべきだと思った。
「分かりました!!分かりましたからっ!!」
「ケン君。お兄さんとお勉強をしましょうね。」
当然ケン君は返事をしない。
そして『ケン君』に勉強を教える事になった。
相手は人形なので、ひたすら私が人形に向かって喋り続けるだけである。
ここからの4時間は本当に地獄だった。
おばさんは後ろでずっと様子を見ている。
なんだかんだでやっと四時間が過ぎ、「じゃあ・・終わりにしようか・・・」ケン君からの返事は無い。
「お疲れ様。ありがとうございました。」
急いで帰る支度をする。
「もう遅いし、ご飯でも食べていきなさい。」
「い・・いえ・・・来る前に食べてきたので大丈夫です・・・」
「食べていきなさいよっ!!!」
「じゃ・・・じゃあ・・頂きます・・・」
ダイニングの様なところに通され、椅子に座った。
包丁を取り出し、何か調理を始めた。
私は冷や汗をダラダラ掻きながら、どうやって逃げるかを必死で考えていた。
おばさんはどうやらカレーを作っている様だ。
鍋は汚く、皿も汚かった。
「い・・頂きます・・・」
「お口に合うかしら?」
「おいしいです・・・」
「それはよかったわ。今日は泊まっていきなさい。」
「い・・・いえ・・悪いですし・・大丈夫です・・・」
「ケン君も喜ぶわ。是非泊まっていって。」
「い・・いえ・・・この後予定もありますので・・・」
「泊まっていきなさいよ!!!!ケン君が可哀想でしょ!!!!!」
あまり怒らせると危険と判断した私は、泊まるふりをして隙を見て逃げ出そうと思った。
私はケン君の部屋でケン君と一緒に寝ることになった。
近くで見るとやはり薄気味悪い人形で、一刻も早くこの家から脱出したいと思った。
「よかったわね~。先生と一緒に寝れて。」
「トイレはダイニングの隣だから。あと2階には行かないでね。」
そう言うとおばさんは部屋を出て行った。
まずはおばさんが寝静まるのを待ち、隙を見て脱出する事にした。
携帯電話を忘れた事を非常に悔やんだ。携帯があれば助けを呼べたのに。
深夜になれば寝るだろうと、深夜まで待つことにした。
特にやることもないので布団の中でうずくまった。
気がつくと深夜1時。いつの間にか寝てしまった様だ。
もうおばさんも寝ただろう、と脱出を決行した。
靴を持ち、玄関まで忍び足で向かう。
一歩・・・また一歩・・・・・。心臓の鼓動だけが響く。
「なにをやっているの?」
ビクッ!!!
「体から血の気がサッーと引いていく。」
横を見るとダイニング扉の隙間からおばさんが正座をしてこちらを見ていた。
ずっとこちらを監視していたようだ。
もう後には引けないので後はがむしゃらに逃げた。
「うわぁあああああああああああ!!!!!」
ケン君の部屋には人が出られる大きさの窓はない。
家の階段を思いっきり駆け上がる。
ドタドタドタドタ!!扉が目の前に見えた。開ける。真っ暗。
電気を探し明かりを付ける。パッと周りが明るくなると、その部屋にはぬいぐるみ、人形がギッシリあった。
不気味な光景だった。
部屋の奥で何か物音がする。
そこに目をやるとそこには、異様に頭が大きく、目玉が飛び出しそうな人間・・・のような物がいた。
私と目が合う。
言葉には出来ない恐ろしさでパニックになり、窓を開けて2階から飛び降りた。
痛みは感じなかった。恐怖がそれに勝っていた。
そのまま全力疾走で出来るだけ遠くまで走り、タクシーを捉まえて家まで走った。
言うまでもないがその日は一睡も出来ず、足に激痛が走っていたので翌日病院に行ったら、左足が折れていた。
その時は気が動転していてあまり考えなかったが、不気味な家に、気の狂ったおばさん、というところまでは分かるのだが、最後に見たあの異形の人間・・・は一体何だったのだろう。
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