石の辻斬り
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ある日、とある田舎町に精巧な作りの石像があるという話を聞き、勉強のために見に行くことにしました。
町に着いた男性は、その石像に詳しいという老人に話を聞くことにしました。
老人は道案内の道中、石像についての話を始めました。
「あの石像は江戸時代の辻斬りが石になったものだそうだ。辻斬りが禁止されてからも辻斬りをやめず、江戸から遠いこの地方まで流れてきてからも辻斬りを続けたのだ。それを怒った山の神様の手によってその男は石にされてしまったそうだ。しかし、年に一度、山の神様の力が弱まる時だけ男は元の姿に戻れるんだそうでな。けれど、その間は別の神様の力で自由に歩き回ることはできんのだそうだ」
と説明しました。
面白い話だと思いながら聞いていると、石像のある場所まで到着しました。
確かに精巧な作りの武士のような石像です。
まるで先ほどの話が本当であるかのように、人間が石にされたかのような精巧さでした。
周りには石でできた灯篭が四隅に配置されています。
道案内をした老人が町に戻ったあとも、しばらくこの石像を眺めていることにしました。
夕方、宿に泊まっていた男性は持ってきていた荷物のうち、彫刻刀が1本無くなっていることに気付きました。
その1本だけは持ち歩いていたのです。
町に到着したときはまだあったので、恐らく石像の場所で落としたのだろうと思い、日が暮れそうな中、彫刻刀を探しに行きました。
すっかり暗くなった頃、月明かりを頼りに石像の場所までやって来た男性は、石像の足元に落ちている彫刻刀を発見しました。
それを拾い上げ、踵を返して宿に帰ろうとしたとき、背後から気配を感じ取ってとっさに振り向くと、何者かが長い棒状のものを振り下ろしてきました。
とっさに避けた男性ですが、右腕を掴まれてしまいました。
先ほどの振り下ろされたものが風を切る音を発したこと、月明かりを反射したことから、それが刃物であることを察した男性は、腕を振りほどこうとしますが上手くいかず、刃物らしきものを振り上げたのを見てとっさに左手に持っていた彫刻刀を相手の腕に突き立てました。
声を出して苦しんでいるところを見計らって腕を振りほどき、一目散に逃げ出しました。
必死に逃げたためか、追いつかれることはありませんでした。
彫刻刀のことはすっかり忘れていました。
翌日、再び石像の下に向かいました。
ひょっとしたら、昨晩の襲撃者が彫刻刀を抜き取り、その辺に捨てていないかと思ったのです。
石像の下に辿りいた男性は驚愕します。
確かに彫刻刀はその場にありました。
石像の左腕に、深々と突き刺さった状態で。
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