覗かれる部屋
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去年の2月頃、私は高校に受かったのを機に一人暮らしをすることになりました。
家が学校から離れていたのと、父親の転勤が重なりちょうどよかったという事情もあります。
なるべく家賃が安く、学校から近い立地の賃貸を探すという高望みな物件探しでしたが、奇跡的にあの部屋は見つかりました。
今思うと、あの家賃はなにかあった部屋なのだとあんに伝えているとしか思えませんが、当時は私も含め家族全員で不動産屋に感謝したものです。
平屋のような構造のアパートで、私の他には誰も住んでいませんでした。
大家さんが入居者がいないと困るという事で家賃を下げたのだという話でした。
部屋は1LDKの、よくあるタイプです。
一つだけ違ったのが、私が入居するはじの部屋だけ、なぜか風呂トイレ別だったということ。
最近試験的にリフォームをしたのだというだけあって、その部屋は全て真新しい白い壁と、明るいフローリングがしいてあります。
引っ越しも問題なく終了し、私は念願の一人暮らしと高校生活を満喫していました。
ゴールデンウィークに差し掛かる頃、トイレがやけにじめじめするな、という印象を感じるようになりました。
お風呂の隣なので、もしかしたら湿気がうつったりするのだろうかと換気を意識して行うようにしたのですが、中々改善しません。
同じ頃、帰宅すると嫌な臭いを感じるようにもなりました。
臭いの原因を探ると、どうも下水から漂っているようでトイレや洗濯機の下、お風呂場、台所などの配管から漂ってきているようです。
パイプユニッシュを使ってみたり、脱臭剤を置いてみたりしたのですが改善はできません。
陰気な気分のせいか、視線を感じるようにもなりました。
カーテンは閉めきっているので誰からも見られるわけがないのですが、お風呂場やトイレに行くと落ち着かないような気持ちになるのです。
トイレに行くのが苦手になり、学校やお店でなるべくすませるようになった頃には、もう家に帰るのが苦手になりつつありました。
そんなある日、深夜にシャワーを浴びていると排水口に短い髪の毛を発見しました。
その髪の毛は私の髪とは違い、金髪です。
ゾっとした瞬間、室内が薄暗くなり、びっくりして振り返るとすりガラス越しに人影がすっと奥へと消えていったような気がします。
慌てて服を着て、私は誰かが部屋の中にいるかもしれないと両親に電話しました。
次の日に母親が心配して家に来てくれたのですが、家に入るなり顔をしかめます。
「酷い臭い…あんた何か腐らせたの?」
言われてみれば、その臭いはなにかが腐ったような腐敗臭です。
私が排水管から臭ってくるのだと説明すると、母親は納得した様子でした。
金髪の抜け毛があるお風呂場を見せて、昨夜の事を説明すると、母親はすぐに不動産屋に連絡をしてくれました。
休日だったにも関わらず、担当の方がすぐにやってきて部屋の状況を確認してくれました。
鍵を付け替えるという対処法をとり、当分は休日に母親か父親が泊まりに来るという事で対応していくことになりました。
平日の夜は、いつも嫌でたまりませんでした。
鍵が変わったのに部屋の中の荷物が動いていたり、ゴミ箱が倒されていたりと目に見えた変化が起こり始めたのです。
その日の夜、トイレに行くと、ドアをとんとんとノックされました。
金髪のやつがドアの向こうにいる、と私は確信し、ドアを開けられたらおしまいだ、とドアノブを握りしめてあっちへいってと小声でつぶやきました。
「苦しい…寒い…」
ドアの向こうから、しゃがれた声がそう言って、ドアノブに一瞬力がかかり、何かがのしかかったような気がすると、人の気配は消え去りました。
その週の休日、私は違う賃貸を紹介してもらいその部屋に引っ越しすることにしました。
不動産屋から実は、前の住人が自殺をしていたのだと聞かされて、両親が憤慨したのです。
前の住人も学生で、彼はお風呂場で亡くなっていたそうです。
縁起が悪いからと大家さんはリフォーム工事を行い、最初に自分の息子を三ヶ月だけ住ませました。
その時には何も起こらなかったらしく、問題ないと思われていたそうなのですが、排水口にある抜け毛の金髪は、確かにその自殺した学生と同じ髪の色だと不動産屋は申し訳無さそうに言っていました。
大好きだったバンドが解散したのがショックで自殺したらしいとも聞かされました。
もしかしたら本当に知らない人が入ってきていたのかもしれません。
そうだとすればもっと問題ですから、やはり引っ越してよかったのだと思います。
新しい部屋は前住んでいた部屋よりも小さく、家賃も高いですが問題のない物件です。
隣の人が弾くギターの音がややうるさいですが、それさえ我慢してしまえば快適に過ごせます。
異様に安い賃貸を借りるときは、よくよく不動産屋に確認をするべきです。
皆さんも気をつけてくださいね。
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