私は以前、8階建てのマンションに住んでいました。
その7階に部屋を借りていたので、帰るときにはエレベーターを使っていました。
足腰に自信がなかったので、エレベーターが故障でもしない限りは待ってでもエレベーターを使っていました。
ある日、私は帰宅した時にエレベーターが閉まっていくのを見ました。
中の人に声をかけ、待ってもらうように頼んでから急いでエレベーターに向かって走りました。
何人かの人がエレベーターに乗っていて、少し多かったので正確に何人いたかは確認しませんでしたが、何とか無事にエレベーターに乗り込むことに成功します。
その後、一人、また一人と6階までに人が降りていきます。
6階から7階に向かってエレベーターが動いているとき、急にエレベーター内の電気が消え、エレベーターが止まってしまいました。
私はエレベーターが故障したことに気がつきましたが、咄嗟のことだったので緊急ボタンを押すことを忘れていました。
ドアをドンドンと叩いていると、急に後ろから子供の泣き声が聞こえてきました。
私は、まだ誰か残っていたことに一切気がつきませんでした。
その子供は多分、男の子だったと思います。
何分、暗がりだったので、輪郭と体格から何となくでしたが。
このまま泣かれても面倒だと思った私は、その子供に「怖くないから泣き止みなさい」と言いましたが、子供は全く反応しません。
[gads2]
何度か説得を試みましたが、結局最後に、「ここから出られない、家に帰りたい」という言葉を聞いただけで、こちらの言葉に反応を示すことはありませんでした。
その時、エレベーター内が明るくなり、動き出しました。
故障が直ったのでしょうか、とにかくこれで出られると思ってほっとしました。
7階に到着し、エレベーターから出た私は振り返りましたが、エレベーター内には誰もいませんでした。
いつの間にエレベーターを降りたのかと思いましたが、いくら小柄な子供とは言え、私の目を盗んでエレベーターから降りたとは思えませんでした。
そして、エレベーターのドアが閉まる瞬間、もう一度「家に帰りたい」という言葉と、子供のすすり泣く声が聞こえてきました。
それ以来、怖くなってエレベーターを使うことはありませんでした。
[gads]