ある団地の部屋での痣
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私は小さな頃、大きな団地に入居したことがありました。
部屋の間取りも大きくなり、お金も安く済むらしく、両親はとても喜んでいたのを覚えています。
大きな団地だったのですが、不思議と近所の子供と遊んだ記憶はありません。
それどころか、その団地内にいると誰かに見張られているような気がして怖かったのです。
周囲の人がすべて私のことを見ているような視線を感じて、いつも急いで自分の部屋に駆け込んでいました。
何日かすると、母親もこの団地の人達は愛想がなく嫌な感じがすると言い出しました。
ですが、念願叶って引き当てたということもあり、気にしなければ、すぐに慣れるだろうと言うことになりました。
私も母親も団地内に一人の友達もできず、別に虐めを受けるわけではないのですが、仲間外れにされたような居心地の悪い思いで過ごしていました。
ある日、私が団地の下の公園を通りかかると、団地の奥さん達が数人で話をしていました。
「あの家族、まだ出ていかないわ。」
「よほど神経が図太いのかしら。」
どうやら、私たち家族のことを話しているようでした。
私は、なぜそんなに嫌われるのか理由が解りませんでした。
両親にそのことを話し、「私たち、何も悪いことしていないのに何故なの?」
と問いかけました。
すると、父親が以外な言葉を口にしました。
「私たちが嫌われているわけじゃないんだよ。」
「お前は何ともないのかい?」
言っていることの意味が解らず、不審に思っていると
「毎日のように変なものを見るので調べたら、この部屋は一家心中があったらしいんだ。」
この部屋に住んでいた3人家族の父親が母親と娘を刃物で刺し殺し、自分も首吊り自殺をしたらしいのです。
「お前は何も言ってこないし、見えていないようだから、学校のことも考えてお父さんたち、我慢してたんだ。」
「夜中の2時頃になると、母親と娘の悲鳴が聞こえてくるんだよ。」
そう言ったお父さんは、よく見るとかなりやつれているように見えました。
そして、気が付いたのです。
夜中に目が覚めると、何時もどこかの家の夫婦喧嘩のような声が聞こえていたことに。
私は、夜中によく喧嘩する家があるくらいに思っていましたが・・・
あれはこの部屋の中で聞こえていて、母親と娘の恐怖の絶叫だったのです。
家族で相談した結果、私が小学校を卒業するまでここに住もうということになりました。
ところが、その数日後、私のお腹に細長い赤い痣ができていることに気付いたのです。
最初は何処かでぶつけたのかと思いましたが、日を追うごとに痣は濃くなってきました。
怖くなった私は家族に相談し、痣を見せたところ、母親が言いました。
「何だか刃物で刺された後のように見え・・・」
「アッ」
その時、父親が叫び、顔が凍りつきました。
そうです、この部屋の娘は無理心中で父親にお腹を刃物で刺されて死んでいたのです。
私達家族は、早急に引っ越しをしました。
あの部屋の娘が何を伝えたくて私のお腹に赤い痣を付けたのかはわかりません。
お腹の赤い痣は、見た目は最近刺されたばかりのように生々しい色の赤です。
あの部屋の娘の刺された場所が、この痣の場所かどうかも恐ろしくて確認していません。
私のお腹の痣は、大人になった今も消えずに残っています。
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