アパートにいた、元気なお婆ちゃん
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私は仕事の都合で別の街に引っ越すことになりました。
そこは新しめのアパートで、最近になって建て替えられたのだそうです。
そして引っ越した当日、私はやたらと元気なおばちゃんに声をかけられました。
どうやら、同じアパートの住人なのだそうです。
いくつか話をしてから部屋に戻りました。
引っ越したばかりで地理に明るくないということを話したら、何でも頼って欲しいと言われたのが心強かったです。
その後も何度かその人のお世話になることがありました。
しかし、そのお礼にお菓子を買ってきたのですが、なぜか「意味がないから」といって断られました。
何だろう、お菓子は嫌いだったかな、と思いましたが、ふくよかな体型をしていて、普段も甘いもの好きだという話をしていたのでそれはないと思いながらも、結局は何も渡せずじまいのままでした。
その1年後、またしても転勤になり、引越しが決まりました。
結局、その町で仕事関係以外の付き合いがあったのがそのおばちゃんだけだったので、最後の挨拶をしようと思っていたのですが、数ヶ月前からめっきり姿を見なくなっていたのです。
なので、アパートの管理人と話す機会があるときに、例のおばちゃんが何号室に住んでいるかを聞いてみたのですが、そのおばちゃんの特徴に合う住人はいないということを聞かされました。
そんなはずはない、ということで何度も聞いてみたのですが、心当たりがないそうです。
仕方がないので諦めかけたとき、ひょっとしたら、ということである住所を紹介されました。
その住所にある家に行ってみると、若い女性が出迎えてくれました。
どうにも、例のおばちゃんの面影があるなと思っていたら、どうやらおばちゃんの娘さんなのだそうです。
そして、おばちゃんはいるかという質問に対して、既に亡くなっているということを告げられました。
仏壇に案内されると、そこには確かに遺影がありました。
間違いなく例のおばちゃんでした。
そのせいで会えなくなっていたのかと納得したのですが、娘さんとの会話で妙な食い違いを感じました。
突き詰めてみると、どうやらおばちゃんが亡くなったのは数年前の話なのだそうです。
死因は、私の住んでいたアパートが建つ前にあった古いアパートが、火事になったことだったのです。
では、あのおばちゃんはどうして私の前に現れたのでしょうか。
そして、なぜ急にいなくなったのでしょうか。
それは今でもわからないままですが、少なくとも私が会話していたのは生きた人間ではないということだけは確かなようです。
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