分水道の悪霊
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その川には分水道がありました。
正確には、分水道の出口ですね。
近くを流れる大きな川が増水した時だけ、川の氾濫を防ぐために分水道に川の水を流し、水量を減らすために作られています。
実際、私がその町に住んでいる数年間に、台風などで大雨が降った時には分水道から川の水が流れてきていたのを見たことがあります。
その分水道の出口は海に近く、海水浴客で賑わっている場所でした。
ただ、大雨が降った翌日は、どんなに天気が良くても付近の住人は海や分水道には近づかないようにしているそうです。
ある日の昼過ぎ、午前中まで降っていた大雨もやみ、晴れてはいないものの、穏やかな空模様でした。
私は休日の予定でしたが職場から呼び出しを受け、職場に向かっていました。
その際、例の分水道付近を通るのですが、どうにも様子がおかしかったのです。
分水道から出ている水が、少し濁っているように見えました。
増水しているので土砂で濁るのは当然ですが、その水は黒く濁っていました。
ただ、川に合流すると黒っぽさは消え去っていました。
気にはなりましたが、急いで職場に向かうことにしました。
職場での用事を済ませた私は、同じ理由で呼び出されていた、この地方出身の上司に分水道の話をしました。
それを聞いた上司は「すぐにお祓いしてもらえ。
知り合いの神社を紹介してやるから」と言って、そのまま神社に向かってお祓いしてもらうことになりました。
無事にお祓いを終えたあと、上司に事情を聞いてみました。
上司の話によると、あの分水道では昔、大雨が降った時に付近の住人が一人、川に落ちて分水道まで流されてしまったそうです。
その際、分水道の出口付近が何かで塞がれてしまい、流された人は出口まで出られずに溺れてしまったそうです。
それ以降、分水道から水が流れてくるたびにその時亡くなった人の怨念が水に乗って流れてきて、人に不幸をもたらしているのだそうです。
すぐ下流には海があり、海水浴客たちにも不幸を振りまいているのだそうです。
そのため、大雨で分水道から水が流れているときは、付近の住人は分水道や海には近づかないようにしているそうです。
もし、お祓いを受けていなかったら私はどうなっていたのかと思うと、今でも震えます。
なにせ、その日に海で溺れ死んだ人がいると聞いていましたので。
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